ブランドは「その人のどの顔を切り取るか」で、らしさが決まる|ロレアル パリから考える化粧品ブランドの世界観設計

ブランドらしさとは、単に「高級感がある」「かわいい」「機能性が高い」といった表面的なデザインや言葉だけで作られるものではありません。

ブランドとは、生活者の中にある、どの部分を切り取って、美しさとして表現しているかによって形づくられているのだと思います。

たとえば、同じ一人の女性でも、昼間に仕事をしている時の顔と、夜にドレスアップして出かける時の顔は違います。

会議で人前に立つ時。
ホテルラウンジで打ち合わせをする時。
久しぶりの友人と食事に行く時。
パーティーやイベントで、少し華やかな服を着る時。
「今日はいつもよりきれいに見せたい」と思う日。

どれも同じ人です。でも、その時々で引き出される雰囲気や、本人が求める美しさは違う。

化粧品ブランドの世界観とは、この「人の中にある複数の顔」のうち、どこに光を当てるかで決まっていくのではないでしょうか。

ロレアル パリが切り取っているのは「今日の私は主役」という美しさ

110年以上の歴史があり、日本ではヘアケアブランドとして有名なロレアル パリ。

ロレアル パリには、単なるヘアケアブランド、ドラッグストアで買える手頃なブランド、というだけでは説明しきれない“高揚感”があります。

ゴールド、ツヤ、香り、レッドカーペット、パーティー、華やかさ。そこには「日常品」ではなく、どこか“特別な日の自分”を引き出すような空気があります。

口コミを見ても、ロレアル パリのヘアオイルに対しては、単に「まとまる」「サラサラになる」だけではなく、

「香りがいい」「高級感がある」「海外のホテルみたい」「サロン帰りのような気分になる」「安いのに贅沢感がある」というような評価が見えてきます。

つまり、ロレアル パリが提供しているのは、単なる髪の補修だけではありません。

もちろん、ツヤやまとまり、指通りといった機能的価値もあります。でもそれ以上に、「私はこのくらい華やかでいていい」と思わせてくれる感覚がある。

ロレアル パリの有名なメッセージに「Because You’re Worth It」があります。
日本語にすると、「あなたにはその価値がある」というニュアンスです。

この言葉を踏まえて見ると、ロレアル パリの華やかさは、ただ派手に見せるためのものではないと感じます。

それは、私には価値がある。だから、もっと輝いていい。もっと自分を主役にしていい。という自己肯定を、ヘアケアやメイク、香り、ツヤ、パッケージを通して可視化しているブランドなのだと思います。

ランコムとロレアル パリの違いは「美しさの切り取り方」にある

ロレアルグループの中には、ランコムのようなラグジュアリーブランドもあります。

同じグループの中にありながら、ロレアル パリとランコムでは、表現している女性像がかなり違います。

たとえば、ランコムはどちらかというと、

知性、品格、余裕、上質感、信頼される美しさ、自分の人生を選び取ってきた成熟感のような印象があります。

イメージでいうと、会議、出張、ホテルラウンジ、上質な服、きれいな姿勢、落ち着いた肌。「派手に見せたい」というよりも、“ちゃんとしている人に見える美しさ”です。

一方、ロレアル パリは、

レッドカーペット、パーティー、夜のお出かけ、、ツヤ髪、レッドリップ、ドレスアップ、今日の自分を盛り上げる高揚感に近い。

つまり、どちらも「女性の美しさ」を扱っているけれど、切り取っている瞬間が違うのです。

ランコムは、社会の中で信頼される美しさ。

ロレアル パリは、人生の中で輝く瞬間の美しさ。

この違いが、ブランドらしさの違いになっている。

同じ女性の中にも、どちらの顔もあります。
仕事を頑張る自分もいるし、華やかな場所で自分を楽しみたい自分もいる。
落ち着いて見られたい日もあれば、今日は少し目立ちたいと思う日もある。

ブランドは、その中の「どの自分」を肯定するかを選んでいるのです。

化粧品は「悩み解決」だけで選ばれているわけではない

化粧品の広告やLPを作る時、どうしても私たちは機能訴求に寄りがちです。

もちろん、これらは大切です。
特にヘアケアやスキンケアでは、機能的なベネフィットがないと選ばれません。

でも、消費者が本当に買っているものは、それだけではないと思います。

ロレアル パリのようなブランドを見ると、消費者はヘアオイルを買っているようで、実はその奥にある、

「自分を少し格上げしてくれる気分」「ちゃんと贅沢している感じ」「今日の私、いい感じと思える瞬間」を買っているように見えます。

広告やブランド設計で重要なのは、商品の機能を説明することだけではありません。

その商品を使うことで、お客様は自分のどの部分を肯定できるのか。どんな気分になれるのか。どんな自分に近づけるのか。

ここまで設計できると、ブランドの言葉は一気に強くなります。

「らしさ」は、デザインのトーンではなく人間理解から生まれる

ブランドらしさというと、つい色やフォント、パッケージ、写真のトーンで考えがちです。

もちろん、それらも重要です。でも、本当の意味での「らしさ」は、もっと手前にあります。

それは、このブランドは、人間のどの感情を肯定しているのか。という問いです。

ロレアル パリであれば、「私には価値がある」「もっと輝いていい」「特別な日の自分を楽しんでいい」という感情。

ランコムであれば、「私は自分の人生を選び取ってきた」「知性や品格も美しさである」「年齢を重ねたからこそ出せる余裕がある」という感情。

この“肯定している感情”が違うから、ブランドの写真も、コピーも、パッケージも、商品ラインナップも変わってくる。

つまり、ブランドらしさとは、最初からビジュアルに宿るものではなく、
どんな人間像を信じているか、どんな自己像を応援しているか、から生まれるものなのだと思います。

ブランドは、消費者の生き方の断片に触れている

人は「なんとなく好き」「なんとなく惹かれる」と思って商品を選んでいるようで、実はその奥には必ず理由があります。

過去の経験。憧れ。安心感。生活のクセ。自分をどう見せたいか。誰にどう思われたいか。自分の中で大切にしている価値観。

そういうものが、モノ選びには自然と出ます。

だから、ブランドは単に商品を売っているのではなく、消費者の生き方の断片に触れているのだと思います。

ロレアル パリを選ぶ人は、ただ髪をまとめたいだけではないかもしれません。

「手頃な価格でも、ちゃんと自分をきれいに扱いたい」「日常の中で少しだけ贅沢な気分になりたい」「今日の自分を、少し華やかに見せたい」そんな気持ちが、商品選びの奥にあるかもしれない。

この“言語化されていない気持ち”まで見に行けるかどうかが、これからの化粧品ブランドや広告にとって、とても大事になると思います。

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