今回、地方に住む30歳の女性に、普段のスキンケアや化粧品選びについてインタビューを行いました。
彼女はもともと首都圏に住んでいましたが、現在は地方で暮らしています。
今回のインタビューで特に印象的だったのは、化粧品広告や商品訴求を考えるうえで、参考になる視点が大きく2つあったことです。
ひとつは、消費者の化粧品棚には「毎日使う一軍」と「調子が悪い時に登場する二軍」があるということ。
もうひとつは、化粧品は“どう使ってもらうか”まで伝えなければ、本来の良さが伝わりきらないということです。
化粧品は、毎日使うものだけではない
化粧品広告を作る時、多くの場合は「毎日使ってもらうこと」を前提に考えます。
もちろん、デイリーケアの一軍に入ることは、ブランドにとって非常に大きな意味があります。毎日使ってもらえる商品になれば、継続購入にもつながりやすく、LTVも高まりやすいからです。
しかし、今回のインタビューで見えてきたのは、消費者のスキンケアは必ずしも「毎日使うもの」だけで構成されているわけではないということでした。
彼女の中には、普段のスキンケアとして使う化粧水や乳液、クリームがあります。一方で、それとは別に、肌の調子が悪い時や、少しケアを足したい時に使うアイテムも存在していました。
たとえば、シートマスク。酵素洗顔。ピーリング。目元用のアイクリーム。美容液。
これらは、必ずしも毎日使うわけではありません。
けれど、肌がくすんで見える朝、乾燥が気になる日、目元の小じわが気になった時、仕事が忙しくて肌のコンディションが落ちている時などに、いつものケアへ追加する“控えのアイテム”として存在しています。
ここに、化粧品広告のヒントがあると感じました。
「一軍入り」だけを狙わない化粧品の入り方
化粧品の広告では、どうしても「毎日使うべき理由」を作りたくなります。
しかし、今は化粧品の選択肢が非常に多く、化粧水、美容液、クリーム、シートマスク、クレンジング、洗顔、部分用ケアまで、消費者の前にはすでにたくさんの商品があります。
その中で、いきなり「あなたの毎日の一軍スキンケアにしてください」と訴求しても、入り込む余地がない場合もあります。
特に、すでにお気に入りの化粧水やクリームがある人に対して、日常のメインアイテムを置き換えてもらうのは簡単ではありません。
そこで考えられるのが、「二軍の化粧品」として参入する戦略です。
ここでいう二軍とは、価値が低いという意味ではありません。
毎日は使わないけれど、必要な時に思い出されるもの。
肌の調子が悪い時に頼りたくなるもの。
特定のシーンで使いたくなるもの。
いつものケアにプラスすることで安心できるもの。
つまり、消費者の生活の中にある“特定の場面”に入り込む化粧品です。
どんな肌状態の時に使う商品なのか
今回のインタビューを通じて感じたのは、商品が選ばれるためには、成分や効果感だけでなく、「どんな時に使うものなのか」が明確であることも重要だということです。
たとえば、ただ「高保湿シートマスク」と言うよりも、
・前の日、夜遅くまで飲んで肌がカサついている朝のためのシートマスク
・子どもの運動会で紫外線をたっぷり浴びた夜に使う美容液
・仕事が忙しくて、鏡を見た時に肌がくすんで見えた日のレスキューケア
・今日はゆっくりお風呂に入れる、そんな夜に使うお風呂用シートマスク
このように言われると、商品が使われる場面が一気に具体的になります。
消費者は「保湿したい」「くすみが気になる」「乾燥が気になる」といった悩みを持っていますが、必ずしもその悩みは日常の中で突然、単独で存在しているわけではありません。
忙しかった翌朝。
生理前。
帰省や旅行の後。
外で長時間過ごした日。
残業が続いた週。
久しぶりに人に会う前日。
こうした生活の文脈の中で、肌の不調を感じています。
だからこそ、化粧品広告では「この成分が入っています」「この悩みにおすすめです」だけではなく、「どんな日、どんな場面で、どんな気持ちの時に使う商品なのか」まで具体化することが、今後さらに重要になるのではないでしょうか。
“場面”を取ることで、商品は思い出されやすくなる
これは、商品設計やネーミングにもつながる視点です。
たとえば、シートマスクや美容液、洗顔料などは、すでに市場に数多く存在しています。成分で差別化しようとしても、似たような成分訴求はすぐに増えていきます。SNSで話題化しようとしても、情報の流れは速く、すぐに埋もれてしまいます。
その中で、ひとつの差別化になるのが、「どの場面で使うものなのか」を商品側が先に定義してしまうことです。
毎日使う美容液ではなく、肌がくすんで見える翌朝の美容液。
ただのシートマスクではなく、疲れて帰ってきた夜に貼る“おつかれ肌”用マスク。
ただの酵素洗顔ではなく、メイクのりが悪い朝に使う洗顔。
このように、生活者が「あ、その場面ある」と思える切り口にできると、商品は単なるカテゴリー名ではなく、生活の中の特定の瞬間と結びつきます。
そして、その瞬間が来た時に思い出されやすくなります。
ここで大切なのは、シーンがコアすぎないことです。
ごく一部の人にしか起こらない場面ではなく、多くの人が日常の中で経験しているけれど、まだうまく言語化されていない場面を見つけること。
「そうそう、そういう日ある」「その時に使いたい」「家に置いておくと安心かも」
そう思ってもらえるシーンを取ることができれば、毎日の一軍スキンケアではなくても、化粧品棚に入れてもらえる可能性は高まります。
化粧品棚の中で、どのポジションを狙うのか
今回のインタビューから改めて感じたのは、化粧品は単に「良い商品だから選ばれる」のではなく、その人の生活の中でどのポジションに入るかが重要だということです。
ある人にとってシートマスクは、毎日使う一軍かもしれません。
一方で、別の人にとっては、肌の調子が悪い時だけ使う二軍かもしれません。
アイクリームも同じです。毎日欠かさず使う人もいれば、本当は毎日使いたいけれど、一工程増えるのが面倒で、時間がある時だけ使う人もいます。
つまり、商品カテゴリーだけで「この商品はこう使われる」と決めることはできません。
その人の美容意識、年齢、予算、生活リズム、悩みの深さ、住んでいる場所、情報収集の仕方によって、同じ商品でもポジションは変わります。
だからこそ、広告を作る時には、まず考えるべきです。
この商品は、消費者のスキンケアの中で一軍を狙うのか。
それとも、調子が悪い時の控えとして入っていくのか。
週に1〜2回のスペシャルケアとして使ってもらうのか。
イベント前や外出後など、特定のシーンで思い出してもらう商品にするのか。
このポジション設計が曖昧なまま広告を作ると、訴求もぼやけやすくなります。
逆に、ポジションが明確になると、訴求するべき使用シーン、ベネフィット、ネーミング、SNS投稿の切り口、LPの見せ方まで具体的になります。
もうひとつの学びは「使い方を伝える重要性」
インタビューでもうひとつ印象的だったのが、化粧品の臨床試験に関わっている彼女が、「化粧品は正しく使うことが大切」と強く話していたことです。
化粧品は、ただ使えばいいわけではありません。
メーカーが推奨している使用量を守ることが大切。
化粧品は、使用量や使用方法が守られて初めて、その商品が想定している結果に近づきやすくなります。
これは広告やCRMにおいて、非常に重要な視点です。
多くの化粧品広告では、購入前の訴求に力を入れます。
しかし、購入後に「正しく使ってもらうこと」も同じくらい大切です。
なぜなら、正しく使ってもらえなければ、商品本来の良さを感じてもらいにくくなるからです。
使用方法の伝達は、満足度を上げるための施策でもある
化粧品の満足度は、商品そのものの品質だけで決まるわけではありません。
使い方を理解しているか。
使用量を守れているか。
どのタイミングで使うべきか分かっているか。
どのくらいの期間、継続すればよいか理解しているか。
併用すべきケアが分かっているか。
こうしたことも、体感や満足度に大きく関わります。
特に、化粧品は医薬品ではないため、短期間で劇的な変化を感じるものではありません。だからこそ、ユーザーが途中で「よく分からない」「変化を感じない」と離脱してしまうこともあります。
その時に大切なのが、購入後のコミュニケーションです。
たとえば、商品同梱物で使用量を分かりやすく伝える。
「パール粒大」「500円玉大」だけでなく、写真やイラストで実際の量を見せる。
朝と夜で使い方が違う場合は、手順を分けて説明する。
使用開始から1週間、2週間、1ヶ月後に、どんな視点で肌を見ればよいかを伝える。
日焼け止めとの併用が大切な商品であれば、「この商品だけで完結」ではなく、日中の紫外線対策まで含めて伝える。
こうした細かなコミュニケーションが、商品の体感価値を高めることにつながります。
「良い商品」ほど、使い方まで届ける必要がある
メーカー側は、商品開発に多くの時間とコストをかけています。
成分を選び、処方を調整し、使用感を整え、試験を重ね、ようやく商品として世に出します。
しかし、どれだけ良い商品でも、消費者が正しく使えていなければ、その良さは伝わりきりません。
間違った使い方になってしまうと、消費者は「思ったより良くなかった」と感じてしまう可能性があります。
つまり、使用方法の伝達は、単なる親切な説明ではありません。
商品の評価を守るための重要なマーケティング施策です。
そして、正しく使ってくれる人が増えれば、商品本来の良さを感じてもらいやすくなります。結果として、満足度やリピート率、口コミ評価にもつながっていくはずです。
広告は「買ってもらう」だけで終わらない
今回のインタビューを通じて、化粧品広告において考えるべきことは、購入前の訴求だけではないと改めて感じました。
まず、商品をどのポジションで生活者の中に入れてもらうのか。
毎日の一軍スキンケアなのか。
週に数回のスペシャルケアなのか。
肌の調子が悪い時の控えなのか。
特定のシーンで思い出されるアイテムなのか。
そのポジションを明確にすることで、広告の切り口は大きく変わります。
そして、購入後には、どう使ってもらうかを丁寧に伝える必要があります。
使用量。
使用タイミング。
使用頻度。
併用するケア。
継続期間。
肌を見る時のポイント。
こうした情報をきちんと届けることで、消費者は商品を正しく使いやすくなり、商品本来の良さも感じやすくなります。
その商品が、生活者のどんな場面に入り、どのように使われ、どんなふうに実感されていくのか。
そこまで設計することが、これからの化粧品広告やCRM、ブランドコミュニケーションにおいて、より重要になっていくのではないでしょうか。

