生活者インタビューから見えた「自分を理解している世代」の消費心理
50代女性というと、どのような消費者像を思い浮かべるでしょうか。
子育てが少し落ち着き、自分の時間が戻ってくる世代。
若い頃よりも自由に使えるお金が増え、高級化粧品やエステ、旅行などにお金を使い始める世代。
美容業界では、そのようなイメージで語られることも少なくありません。
もちろん、高級化粧品に憧れたり、エステに通ってみたいと思ったりする気持ちはあります。
しかし、実際に50代前半の女性へ話を聞いてみると、単純に「自分のために高額なものを買うようになる」という姿とは、少し違う心理が見えてきました。
高いものを「いいな」とは思う。けれど、本当に自分に必要なのか。買ったあと、自分はきちんと使いこなせるのか。一度だけではなく、無理なく続けられるのか。
50代女性は、憧れだけで商品を選ばなくなったのではありません。
これまでの経験を通して、自分にとって何が必要で、何なら続けられるのかを理解している世代なのではないでしょうか。
高級なものに興味がないわけではない
今回話を聞いたのは、大学生の息子を持つ50代前半の女性です。
午前中を中心にパートで働き、夫は安定した仕事に就いています。英語の勉強、ウクレレ、ヨガ、ウォーキング、読書、推し活など、自分の興味が向いたものを日常の中で楽しんでいました。
化粧品には大きなお金をかけず、YouTubeや口コミで紹介されていた、手頃で評判のよい商品を選ぶことが多いそうです。
一方で、高級化粧品そのものを否定しているわけではありません。
「高級なデパコスを使ってみたい気持ちはある」と話しながらも、続けて次のような考えを教えてくれました。
高い化粧品を一度だけ使っても、使い続けられないなら意味がない気がする。
だから、無理なく続けられる価格の中で、よいものを見つけたい。
高い化粧品の価値を認めていないわけでも、きれいになりたい気持ちがなくなったわけでもありません。
自分の生活や性格を考えたときに、それを本当に有効活用できるのかを、冷静に判断しているのです。
50代は「自分が続けられないこと」も分かっている
若い頃は、憧れや勢いで何かを買うことがあります。
人気の化粧品を一式そろえる。
美容家が勧める方法をすべて試す。
高額な美容機器を買う。
新しい趣味の道具を一通りそろえる。
しかし、年齢を重ね、さまざまな商品やサービスを経験すると、自分の傾向も見えるようになります。
毎日何工程もスキンケアをするのは続かない。
予約を取って定期的に通うのは面倒になる。
使い方が複雑なものは、結局使わなくなる。
高いものを買うと、使うたびに金額が気になってしまう。
50代前半は、できることが減る年代というよりも、自分ができることと、続けられないことの境界が分かってくる年代だと考えられます。
そのため、高額な商品に憧れを持ちながらも、
「自分にはもったいないかもしれない」
「結局、使わなくなるかもしれない」
「この金額を払うほど活用できるだろうか」
と、一度立ち止まることができます。
自分にとっての価値を判断する精度が上がっている状態です。
お金をかけなくても、人生を楽しむ方法を知っている
今回のインタビューで印象的だったのは、日常の楽しみ方の多さでした。
英語はAIやアプリを使い、毎日短い文章を作る。
ウクレレはYouTubeを見ながら練習する。
友人とウォーキングをしながらジムへ行く。
本はAudibleや電子書籍を活用する。
近くで行われるヨガに参加する。
一つひとつに、ものすごく大きなお金をかけているわけではありません。
それでも、毎日の中には、やりたいことがたくさんあります。
50代女性の豊かさは、高額な商品や豪華な体験だけでつくられるものではありません。
小さな楽しみを生活の中に増やすことでも、人生は十分に充実します。
50代女性は、お金をかけなくても自分を満たす方法を、いくつも持っている人でもあるのです。
50代女性は、使う先を選んでいる
化粧品には大きなお金をかけない一方で、今回の女性は最新のパソコンを購入し、海外旅行へ行き、推しのファンクラブにも入っています。
お金を一切使わないわけではありません。
自分が楽しめると分かっているものや、実際に使う場面が想像できるものには、お金を使っています。
反対に、高価であっても、自分が使いこなせるか分からないものには慎重です。
ここから分かるのは、50代女性の消費を、単純な「節約志向」や「低価格志向」で捉えるべきではないということです。
50代前半は、子どもにかかるお金が完全になくなる年代でもありません。大学の学費や生活費など、まだ家族への支出が続いている家庭もあります。
老後について考え始める時期でもあります。
その中で、自分の楽しみも諦めたくない。
だからこそ、すべてにお金をかけるのではなく、自分が価値を感じる場所を選んで使うようになります。
高いか安いかだけではなく、
- 自分が本当に使うか
- 続けられるか
- 生活が楽しくなるか
- 使ったあとに後悔しないか
- 今の自分に合っているか
という判断が入るのです。
化粧品の選び方は、50代で突然変わるわけではない
50代になると、肌悩みは変わります。
シミ、シワ、たるみ、乾燥、くすみ、毛穴など、若い頃には意識しなかった変化が気になるようになります。
しかし、肌悩みが変わったからといって、化粧品の選び方まで突然変わるとは限りません。
それまで数十年かけてつくられてきた、
- 化粧品にいくらまで出せるか
- どこで化粧品を買うか
- 何を品質の基準とするか
- 誰の情報を信頼するか
- スキンケアにどこまで手間をかけるか
- 効果、使用感、価格のどれを優先するか
といった価値観は、50代になっても残っています。
50代女性の化粧品選びは、50代になった瞬間に始まるものではありません。
20代、30代、40代のときに積み重ねてきた美容経験の延長線上にあるのです。
元デパコスユーザーは、価格を下げても品質基準を下げるとは限らない
例えば、これまで百貨店でデパコスを購入してきた女性が、家計や今後の生活を考えて、化粧品にかける金額を下げるとします。
価格を下げるからといって、これまで重視していた価値まで、すべて手放すわけではありません。
デパコスを使ってきた人は、商品の中身だけでなく、
- パッケージの美しさ
- 使用したときの心地よさ
- ブランドへの信頼感
- 研究開発の背景
- 丁寧につくられている感覚
- 化粧品を使う時間の特別感
なども含めて、品質を判断してきました。
そのため、価格を抑える場合でも、単純に最も安い商品を探すのではなく、
「デパコスに近い品質なのに、価格は抑えられている」
「大手メーカーの研究技術を生かしている」
「広告費や店舗費を抑えることで、品質に対して価格が手頃になっている」
といったブランドを選ぶ可能性があります。
販売価格は下がっていても、選択のベースには、デパコスを使ってきた自分の品質基準があります。
価格帯だけを見れば中価格帯へ移動していても、購買心理までドラッグストアコスメのユーザーと同じになるわけではありません。
人のおすすめで選ぶ人は、50代でも人のおすすめで選ぶ
今回の女性は、YouTuberや芸能人、美容に詳しい友人などが勧めていた商品をきっかけに、化粧品を試していました。
君島十和子さんが目元の保湿について話していたため、アイバームを購入する。
大沢あかねさんがお風呂で乳液を使っていると知り、自分も試してみる。
韓国旅行では、美容に詳しい知人や現地の人に教えてもらった商品を買う。
このように、人のおすすめを起点に選ぶ人は、50代になっても、その基本的な選び方は変わりません。
50代女性に必要なのは、人生を変える商品ではない
50代女性に向けた美容広告では、
「今からでも若返る」
「昔の自分を取り戻す」
「年齢に負けない」
「自分への最高のご褒美」
といった表現が使われることがあります。
しかし、今回のインタビューから見えたのは、もっと現実的で、自分に対して肯定的な女性の姿でした。
この先も元気に動き、新しいことを試し、人生を楽しみたいと考えています。
そのような女性に必要なのは、これまでの自分を理解し、肯定したうえで、この先の毎日を少し心地よく、少し楽しくしてくれる商品。
その視点を持つことが、50代女性に選ばれる美容・化粧品ブランドを考えるうえで、重要なのではないでしょうか。

