化粧品ブランドのファンコミュニティ事例4選|参加したくなる場所に必要なこと

近年、化粧品ブランドが自社のファンコミュニティを開設する動きが増えています。

ブランドから情報を受け取るだけではなく、利用者同士で商品の使い方を共有したり、ブランド担当者と交流したり、商品モニターやイベントに参加したりできる場所です。

SNSとは異なり、そのブランドや美容に関心のある人が集まるクローズドな空間を作れるため、ブランド側にとっては、顧客との継続的な関係を築けることが大きな魅力です。

一方で、化粧品ブランドのファンコミュニティには、まだ大きな課題があります。

それは、コミュニティを作ったあと、どうやって生活者に参加してもらうかということです。

今回は、ディセンシア、アテニア、オルビス、エクセルの事例を見ながら、化粧品ブランドにおけるファンコミュニティの現在地と、これから必要になる設計について考えます。

目次

ディセンシア「スキニティ」

ディセンシアは、2025年9月に肌悩み総合コミュニティ「スキニティ」を開設しました。

テーマとして掲げているのは、「肌愛を育む」こと。

自分の肌と向き合い、前向きに捉えるきっかけを作る場所として設計されています。利用者同士が肌への思いや、お手入れに関する情報を共有できるコミュニティです。

コミュニティ内には、自己紹介や日々の肌について投稿できる交流スペース、肌に関する活動を投稿するコンテンツなどがあります。

さらに、投稿や「いいね」を促すキャンペーン、商品モニター、オンライン体験会も行われています。

たとえば、UVアイテムのモニター企画では、商品を受け取るだけでなく、オンライン体験会で商品の違いや正しい使い方を学べる機会が設けられました。

アテニア「アテニア ファンコミュニティ」

アテニアは、「アテニア ファンコミュニティ」を運営しています。

コミュニティには、商品を試した人が感想を投稿する「おためしサロン」や、美容について利用者同士で話す「おしゃべりカフェ」などがあります。

商品の口コミだけでなく、愛用者がおすすめするお手入れ方法や、季節限定品、メイクアイテム、ファッション商品の感想なども共有されています。

さらに、オンライン・リアルイベントへの招待や、新商品のモニター企画も実施されています。

過去には、利用者がアテニアとの思い出を語りながらブランドの歩みを振り返り、洗顔研究の紹介やクイズを楽しむオンラインファンミーティングも開催されました。

アテニアのコミュニティで分かりやすいのは、参加行動に対するメリットが用意されていることです。

投稿やコメント、ほかの人の投稿への「拍手」など、コミュニティ内で活動するとポイントがたまり、抽選プレゼントに応募できます。

化粧品について自分から投稿することに慣れていない人でも、「参加するとポイントがもらえる」「商品を試せるかもしれない」と分かれば、最初の行動を起こしやすくなります。

オルビス「ORBIS Community」

オルビスでは、2019年から一部の上位会員を対象とした「VIP Community」を運営してきました。

2026年には「ORBIS Community」としてリニューアルしています。

ORBIS Communityでは、利用者同士がスキンケアやコスメの情報を交換したり、好きな商品について語ったりできます。

「自分に合うスキンケアはどれか」「ほかの人はこの商品をどう使っているのか」といった疑問を、利用者同士で共有できる場所です。

また、商品の使い方や肌悩みについて、プロやオルビス社員へ相談できることも案内されています。コミュニティ限定の特典や最新情報も用意されています。

オルビスの事例で注目したいのは、VIP会員限定だったコミュニティを、すべての会員へ開いたことです。

もともとブランドとの関係が深い人だけでなく、まだ利用歴が短い人も参加できるようにすることで、コミュニティを「ロイヤル顧客だけが集まる場所」から、「これからブランドへの理解を深める場所」へ広げようとしているように見えます。

エクセル「エクセル ファンコミュニティ」

メイクアップブランドのエクセルも、2024年に公式ファンコミュニティサイトを開設しています。

会員登録すると、ファン同士だけでなく、エクセルのブランド担当者ともコミュニケーションができます。

代表的なコンテンツの一つが「みんなのメイク」です。

エクセルの商品を使った毎日のメイクや、季節、イベントに合わせたメイクを投稿し、ほかの利用者と共有できます。

また、投稿、コメント、「いいね」といった交流機能に加え、会員だけが閲覧できる限定コンテンツも用意されています。

スキンケアブランドのコミュニティでは、肌悩みや商品の使用感を語る投稿が中心になりやすい一方、メイクブランドには、完成したメイクを見せ合える強みがあります。

商品について文章で感想を書く以外にも、「このアイシャドウを使って、こんなメイクができた」という画像を投稿できるため、利用者自身がコンテンツの発信者になりやすいのです。

化粧品ブランドのファンコミュニティは、中身を想像しにくい

芸能人やアイドルのファンクラブであれば、入会後に何ができるのかを比較的イメージしやすいでしょう。

会員限定の写真や動画を見る、チケットの先行受付に応募する、限定グッズを購入する、イベントに参加する。

「ここに入らなければ体験できないこと」が明確です。

一方、化粧品ブランドのファンコミュニティは、入ったことがない人にとって、中で何が行われているのか分かりにくいものです。

「美容について話せます」「商品について投稿できます」「ほかの利用者と交流できます」

これだけでは、わざわざ新しく会員登録するほどの魅力を感じない人も少なくないでしょう。

美容情報は、Instagram、X、YouTube、口コミサイトなどですでに大量に発信されています。

生活者から見れば、コミュニティに入ることは、新しく確認する場所が一つ増えることでもあります。

参加するために会員登録をして、プロフィールを設定し、コミュニティの使い方を覚え、定期的に見に行く。

それだけの負担を超える価値が見えなければ、「気になるけれど、登録まではしなくていい」と判断されてしまいます。

コミュニティの最初の課題は「交流を増やすこと」ではない

ファンコミュニティを作ると、ブランド側は利用者同士の活発な交流を期待します。

しかし、最初から多くの人が自発的に書き込み、互いに交流してくれるとは限りません。

すでにブランドへの愛着が強い人は、商品について話したり、ほかの利用者の投稿を読んだりすること自体を楽しめるでしょう。

一方で、コミュニティの外にいる人にとっては、「何を書けばよいのか分からない」「詳しいファンばかりだったら入りにくい」「美容の相談なら、SNSや口コミサイトでもできる」という心理的なハードルがあります。

つまり、立ち上げ直後に必要なのは、ファン同士に交流してもらうことだけではありません。

その前に、コミュニティへ入る具体的な理由を作ることが必要です。

参加する理由を、分かりやすく用意する

参加のハードルを下げる方法の一つが、分かりやすいメリットです。

たとえば、

  • コメントや投稿によってポイントがたまる
  • 会員限定クーポンがもらえる
  • 商品モニターに応募できる
  • 新商品の先行体験ができる
  • 抽選でイベントに参加できる
  • コミュニティ限定商品を購入できる

といったものです。

プレゼントやポイントだけを目的に人を集めても、長期的なファン化にはつながらないという意見もあるでしょう。

しかし、まだコミュニティの価値を体験していない人には、最初に参加するきっかけが必要です。

メリットによって入ってきた人が、限定コンテンツやブランド担当者との交流を通してブランドへの理解を深め、少しずつ滞在する理由を見つけていく。

ファンコミュニティの入口では、そのような段階的な設計が必要なのではないでしょうか。

本当に価値があるのは「ここでしか知れないこと」

化粧品ブランドのコミュニティには、もう一つ大きな可能性があります。

それは、ブランドや商品が作られる過程を公開することです。

たとえば、

  • 研究者が成分や処方について解説する
  • 開発担当者が商品化までの試行錯誤を話す
  • デザイナーが容器やパッケージの制作工程を見せる
  • 商品名や色名が決まるまでの裏話を紹介する
  • 不採用になった案や、改良前の試作品を公開する
  • 長く働く社員が、ブランドの歴史を話す
  • 利用者から届いた声が、どのように商品へ反映されたかを報告する

といった情報です。

メーカーの中で働く人にとっては当たり前の工程でも、生活者が知る機会はほとんどありません。

どのような思いで商品が作られ、何度の試作を重ね、なぜこの成分、この色、この容器になったのか。

それを知ることで、今まで何気なく使っていた商品に、新しい魅力が生まれます。

「自分だけが知っている」「ここに入っているから見られる」「商品を使うときに思い出せる」

この感覚は、芸能人のファンクラブにおける限定写真や限定動画に近いものです。

美容・健康系ブランドで、参考になるのが、花王のアカウント。

https://www.instagram.com/kao_designer

花王の商品のパッケージがどのように作られているのか、イラストはどのように書かれているのかなど、動画で紹介されています。

生活者にとっては、なかなか目にする機会がない動画なので、フォロワー数も増え注目されています。

もちろん、化粧品ブランドだと、薬機法や個人情報、企業秘密などの関係で、公開できる範囲には限界があります。

それでも、完成した商品情報だけを発信するのではなく、その周辺にある人、思い、時間、試行錯誤を見せることはできます。

むしろ、完成品の情報があふれている現在だからこそ、完成するまでの物語に価値が生まれます。

ブランドを一人の人物のように捉えてみる

化粧品ブランドのファンコミュニティを考える際には、ブランドを一人の人物のように捉えてみるのもよいかもしれません。

そのブランドは、何を大切にしている人なのか。

どのような過去があり、どのような人たちと商品を作っているのか。

最近は何を考え、何に挑戦しているのか。

うまくいかなかったとき、どのように改善したのか。

その人物についてもっと知りたいと思ってもらうように、ブランドの内側を少しずつ見せていくのです。

ブランドの人格が見えるほど、生活者は商品だけでなく、ブランドそのものに愛着を持ちやすくなります。

ファンコミュニティは、体験を設計するもの

ファンコミュニティで大切なのは、そこへ入ることでどのような体験ができるのかを設計することです。

情報を受け取れる。商品を試せる。担当者と話せる。制作の裏側を知れる。自分の声がブランドに届く。開発に参加できる。同じ商品を好きな人と出会える。

この一連の体験があって初めて、コミュニティは生活者にとって、定期的に訪れたい場所になります。

化粧品ブランドのファンコミュニティにおける現在の大きな課題は、交流を活性化させること以前に、まず入ってもらうことです。

この場所に入ることでしか得られない情報、体験、関係性を、参加前の人にも具体的に伝えること。

そして、ブランドを一人の人物のように感じてもらい、「もっと知りたい」と思える発信を続けること。

これからの化粧品ブランドのファンコミュニティには、ファン同士をつなぐ場所であると同時に、ブランドそのもののファンを育てる場所としての設計が求められるのではないでしょうか。

目次