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次から次へと新しい情報が入ってきて、ひとつの商品をじっくり使い続ける前に、次の候補がすぐ目に入る時代です。
そんな中で、化粧品を変える理由としてよく起きているのが、「効果を感じられない」ということです。
・今使っているものが悪いわけではない。けれど、続けていても手応えがない。
・本当に合っているのかわからない。
・変わっているのか、変わっていないのか、判断がつかない。
この“効果を感じられるかどうか”の部分は、今の多くの化粧品販売では、ほとんど消費者本人に委ねられています。
商品を購入した後に「あなたの肌が今どう変わっているのか」「続ける意味がどこにあるのか」「この先どうなっていくのか」を、継続的に一緒に見てくれる仕組みは、まだ少ないように感じます。
消費者が欲しいのは、劇的な変化だけではない
今回のインタビューで、とても印象的だった言葉があります。
ある方は、化粧品を使っていて嬉しい瞬間について、こんなふうに話していました。
本人にしかわからないくらいの、ほんの小さな変化に気づいた時。前より少しシワが薄い気がする。なんとなく前より白くなった気がする。化粧をしている時に鏡を近くで見たとき、前より少しだけ印象が違う気がする。そんな、小さな変化でも感じられると嬉しい。
その変化が誰の目にも明らかな劇的ビフォーアフターである必要はない、ということです。
むしろ継続の動機になるのは「あれ、もしかして効いてるかも」と本人が思えることなのだと思います。
そしてその小さな実感が、「やっぱり続けていてよかった」「自分がちゃんと続けてきたから今があるのかもしれない」という納得感に変わっていくのです。
つまり、化粧品において本当に重要なのは、商品力だけではありません。
変化を感じられること。そして、その変化を自分の中で意味づけできること。
そこまで含めて、継続はつくられているのだと思います。
離脱の理由は、効果がないではなく「効果に気づけない」こと
もちろん、商品力を上げることは大前提です。
より良い処方、より良い使用感、より高い満足度。そこは欠かせません。
ただ、そのうえで見落とされがちなのが、効果に気づけないから離脱することもあるという点です。
たとえば別のインタビューでは、ある方がメラノCCを2年近く使っていて、最初の1年ほどは「気になっていた部分が少し薄くなった気がする」「若干白っぽくなったかな」と感じていました。
けれど妊娠後期以降は、その実感が揺らぎ始め、「最近はあまり効果が見られない気がする」と話していました。
このケースで起きているのは、単純な“効く・効かない”の二択ではありません。
ホルモンバランスの変化、乾燥、生活の変化、育児によるケア時間の不足。さまざまな要素の中で、本人が今の肌状態を判断しきれなくなっている状態です。
でも、ここでもし「使い始めて3か月でここがこう変わりました」「今は乾燥が強い時期なので、ここは感じにくくなっています」「このまま続けると、次はこの変化を見ていきましょう」といった見立てがあれば、感じ方は変わっていたかもしれません。
消費者は、自分ひとりで肌の微差を見続けるのが意外と難しい。だからこそ、変化が起きていても見逃してしまう。
その結果、「なんとなく効いていない気がする」に傾いてしまう。
ここに、今の化粧品販売の大きな空白があるように思います。これはインタビュー内容を踏まえた推論です。
この役割を、実はエステはすでにやっている
変化に気づかせるという役割を、すでに自然にやっている場所があります。
それがエステやサロンです。
サロンでは、お客様が月1回など継続して来店し、そのたびに肌を見てもらえます。
触れて、見て、前回と比べて、「今日は乾燥していますね」「ここは調子いいですね」「この化粧品を使い始めて3か月ですが、ここに変化が出ていますね」と、プロの目で見立ててもらえる。
さらに、「今後こうなっていく可能性があるから、今はこういうケアを入れておきましょう」と、先の道筋までつくってくれる。
つまりサロンは、施術を提供しているだけでなく、変化を翻訳する場所にもなっています。
本人では気づきにくい小さな変化を、第三者の目で拾い、意味づけし、継続のモチベーションにつなげているのです。
一方で、化粧品会社やECは、そこまで一人ひとりの肌を見続ける設計にはなっていないことが多い。
コスメカウンターでも、その場の接客はあっても、毎月継続して密着し、経過を見ながら伴走するところまでは、なかなか難しい。よほどのお得意様でない限り、そこまでパーソナルに見立てを続けることは少ないはずです。
これからのECに必要なのは、見続けることかもしれない
だからこそ、これからの化粧品会社やECに必要なのは、1人の人の肌を見続けることなのではないかと思います。
単発で売る。その時だけ接客する。その時だけおすすめする。ではなく、継続の中で変化を一緒に見ていく。
たとえば、
・使用前後の写真を比較できる
・継続記録を残し、数か月単位で振り返れる
・「ここが変わってきています」と言葉で伝える
・今の肌状態に応じて、次に見るべきポイントを示す
・「今は乾燥が強い時期」「今はホルモン変動の影響が強い時期」など、背景も含めて解釈する
・小さな変化を残せるようにする
こうした仕組みがあるだけで、「なんとなくいいかも」は「やっぱり効いているかも」に変わりやすくなります。
一度、自分に合っていると感じた商品でも、効果が見えなくなれば人は離れます。
逆に、小さな変化でも感じ続けられれば、人は長く続けられる。
特に化粧品を選び直すことを面倒だと感じる人にとっては、この納得感が5年、10年単位の継続の土台になり得ます。
変化に気づけることは、次の美容行動も生む
そして、この話は継続だけでは終わりません。変化を自分で感じられることは、次の美容行動そのものも生みます。
別のインタビューでは、ある方が「夫や友人に肌きれいになったねと言われた時、もっと良くなろうと思う」と話していました。
今の自分に少し手応えがある。褒められて嬉しかった。最近ちょっと調子がいい。今の自分、悪くないかも。だから、もっと上を目指したくなる。
つまり美容のモチベーションは、マイナスからだけではなく、プラスの実感からも立ち上がるということです。
ここでもやはり鍵になるのは、自分自身で効果を感じられているかどうかです。
変化を感じられるから、続けられる。変化を感じられるから、もっと良くなりたくなる。
この循環をつくれるブランドは、単に商品が売れるブランドではなく、美容のモチベーションを育てるブランドになっていくのだと思います。
これから化粧品会社に求められるのは「商品力」+「見立て力」
結局のところ、これからの化粧品会社に必要なのは、商品力だけではなく、見立て力なのかもしれません。
・今この人の肌はどういう状態なのか。
・何が起きているのか。
・この先どう変わっていくのか。
そうした変化を見立てて、言葉にして、伝え続けること。
それは従来、サロンや一部の接客の強い販売員が担ってきた役割でした。
でも、ECや化粧品会社の継続施策の中にも、もっと組み込める余地があるはずです。
もちろん、それを実行するには、見立てができる人材も必要です。
単発の接客ではなく、継続の接客ができること。
一人ひとりの変化を追って、パーソナルに伝えられること。
その意味では、サロンで働いていた人、継続して肌を見てきた人の視点は、これからのECやブランド運営にとって非常に価値が高いはずです。
まとめ
化粧品会社は、良い商品をつくるだけでは足りない時代に入っているのかもしれません。
消費者は、情報の多い環境の中で、常に次の選択肢にさらされています。
その中で、商品を使い続ける理由になるのは、劇的な変化だけではありません。
むしろ、はだの変化を、自分で感じられることが、継続のいちばん深い動機になることがあります。
だからこそ、化粧品会社は変化に気づかせる仕組みをつくることも大切なのだと思います。
その仕組みがあれば、「なんとなく効いていない気がする」は減り、「やっぱり続けていてよかった」に変わっていき、さらにその実感は、次の美容行動や、もっときれいになりたいという前向きな気持ちまで育てていくはずです。

