化粧品ブランドに必要なのは、ありそうでなかったを作る力

化粧品業界で差別化を考えると、多くの場合、最初に出てくるのは「成分」です。

新しい美容成分を入れる。
高濃度にする。
独自処方にする。
浸透技術を打ち出す。
研究データを見せる。

もちろん、それはとても大切です。

でも、今の化粧品市場を見ていると、成分や機能だけで「明確に違う」と感じてもらうことは、どんどん難しくなっています。

ナイアシンアミドも、レチノールも、ビタミンCも、セラミドも、ヒアルロン酸も、発酵成分も、ペプチドも、幹細胞系の成分も、すでに多くのブランドが使っています。

どの商品も、それなりに良さそうで、どのLPにも、同じような悩みと同じようなベネフィットが並んでいる。

それは、消費者から見ると、どれも同じに見えるという状態になりやすい。

ここで必要になるのが、「ありそうでなかったを作る力」です。

「ありそうでなかった」とは、すでに消費者の生活の中にある感覚や習慣を、化粧品にずらして持ち込むことです。

もしくは、既存の化粧品カテゴリの中に、少しだけ違和感のある見え方・使い方・意味づけを入れることです。

見た瞬間に「なにこれ?」と興味を引く、これが、「ありそうでなかった」の正体です。

ありそうでなかったは、ゼロから発明しなくていい

多くの人は、新しい商品を作ろうとすると、「今までにないものを作らなければいけない」と考えます。

でも、本当にゼロから新しいものを作るのは難しい。

化粧水、美容液、クリーム、洗顔料、クレンジング、下地、ファンデーション、パウダー。カテゴリはすでに存在しています。

保湿、美白、シワ改善、毛穴、ハリ、ツヤ、透明感。悩みの切り口もある程度出尽くしています。

だからこそ、新しさは「まったく存在しなかったもの」ではなく、既存のもの同士の組み合わせ方から生まれることが多いです。

たとえば、ユンスの個包装美容液。

美容液を個包装にして、人気を得ています。

個包装という概念は、日常の中に普通にあるもので、お菓子の個包装。サプリの個包装。使い切りパック。旅行用のスキンケア。衛生的に使える一回分の包装など。

でも、それを美容液に落とし込んだことで、「新鮮な美容液」「使う直前に開ける美容液」「鮮度を感じる美容液」という新しい体験が生まれました。

ここで重要なのは、個包装そのものが新しいわけではない、ということです。

新しかったのは、美容液に鮮度という体験を持ち込んだことです。

つまり、ありそうでなかったとは、技術そのものの新規性ではなく、意味づけの新規性であるのです。

消費者は、機能より違いを知りたい

化粧品を売る側は、つい機能から説明したくなります。

でも、消費者が最初に反応するのは、必ずしもそこではありません。

最初に反応するのは、もっと直感的な部分です。
「なにこれ?」「見たことない」「かわいい」「高そう」「効きそう」「面白そう」「私っぽい」「誰かに見せたい」

どれだけ良い処方でも、どれだけ真面目に作っていても、特に化粧品は「他と違う」と感じてもらえなければ、そもそも詳しく読まれません。

最初の数秒で、「あ、またよくある美容液ね」と思われたら終わりです。

逆に、「え、これ何?」「ちょっと詳しく見たい」と思わせることができれば、そこから成分や処方の説明が届きやすくなる。

つまり、ありそうでなかったは、単なる商品企画の話ではなく、情報を読んでもらうための入口設計でもあります。

ジバンシィに見る、違和感の作り方

今回ジバンシィというブランドについて、調べてみました。

ジバンシィは、モード、都会的、ミステリアス、少し毒がある、印象に残る美しさという方向で見せているブランドです。

ここで大切なのは、単に「高級感がある」ということではありません。

ジバンシィは、化粧品においても、「印象を作る」という価値を持たせているように見えます。

人によって好き嫌いが分かれると思いますが、全員に好かれることよりも、特定の人の記憶に深く残ることを優先しています。

だからこそ、美容クリーム=白という概念を壊す黒い美容クリームを作ったり。大胆かつ、斬新なアイデアを形にしているのです。

「ありそうでなかった」を作る方法

使い方を変える

毎日使う美容液を、1回使い切りにする
夜使うものを、朝専用にする
塗るものを、貼るものにする
洗い流すものを、拭き取るものにする
クリームを、マッサージとセットにする
化粧水を、肌診断とセットで使う

使い方が変わると、同じ成分でも新しく見えます。

消費者にとっては、「何が入っているか」よりも、「どう使うか」の方がイメージしやすいからです。

たとえば、「高濃度ビタミンC美容液」よりも、「開けた瞬間から30秒以内に使う美容液」の方が、使用シーンが浮かびやすい。

つまり、使い方を変えることは、商品の記憶のされ方を変えることでもあります。

見た目を変える

黒いクリーム。
ラメが入ったクリーム。
青や緑など、肌にのせる前から印象的な色。
モードなパッケージ。
香水のような存在感。

化粧品は、使用前に必ず見る商品。見た目はかなり重要です。

大切なのは、ブランドの意味とつながった見た目にすることです。

ジバンシィの場合、黒やモード感は、「印象的な個性」「都会的」「普通ではない美しさ」とつながっています。

だから違和感がブランド価値になる。

もしナチュラルでやさしい世界観のブランドが、突然黒いラメ入りクリームを出したら、違和感がノイズになるかもしれません。

見た目の新しさは、ブランドの思想とつながっていると強くなります。

意味を変える

たとえば、クリームを「保湿するもの」ではなく、「肌を休ませるもの」と意味づける。

美容液を「悩みに効かせるもの」ではなく、「今日の肌にスイッチを入れるもの」と意味づける。

下地を「ファンデの前に塗るもの」ではなく、「印象を仕込むもの」と意味づける。

洗顔を「汚れを落とすもの」ではなく、「肌をリセットする儀式」と意味づける。

同じ商品でも、意味が変わると、選ばれ方が変わります。

最後に

化粧品業界で勝つために必要なのは、成分競争に勝つことだけではありません。

むしろ、これからは、すでにあるものを、まだ見たことのない形で見せる力が、ブランドの強さになっていくのだと思います。

「ありそうでなかった」を作れるブランドは、消費者の中に新しい欲しい理由を作ることができる。

そして、それこそが、これからの化粧品ブランドが選ばれるための大きなヒントになるはずです。

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