「冷やし雪肌精」は、なぜ今年のブームになったのか?

目次

既存商品を夏の恒例行事に変えた、体験設計のつくり方

今年の夏、「冷やし雪肌精」という言葉を目にする機会が増えました。

冷蔵庫で冷やした雪肌精を肌になじませる。暑い日に、冷たい化粧水やジェルで肌を整える。SNSや店頭、CM、イベントなど、さまざまな場所でこの使い方が発信されています。

以前から雪肌精は、夏に冷やして使う方法を提案していました。最初は、「冷蔵庫で冷やしても使えます」「暑い日に使うと気持ちいいですよ」という、商品の使い方を紹介する程度のものでした。

ブームの始まりは「使い方提案」だった

数年かけて、雪肌精は「冷やして使う」という提案を、「冷やし雪肌精」という固有の名前を持つ企画へ育てていきました。

単に「化粧水を冷やす」では、どのブランドでもできる話です。しかし、「冷やし雪肌精」と呼ぶことで、雪肌精独自の美容習慣として認識され始めます。

これは、商品に新しい肩書を与えた段階です。

ただし、肩書をつけるだけではブームにはなりません。

「冷やし雪肌精というものがあります」と何度伝えても、生活者の反応が「知っている」で止まってしまえば、実際に商品を手に取る理由にはならないからです。

知っている商品を、今年やってみたい体験へ変えた

今年、冷やし雪肌精が大きく広がっている理由は、この肩書を、生活者が参加したくなる“体験”にまで引き上げたことにあります。

CMでは、冷蔵庫から冷えた雪肌精を取り出して使う場面を見せる。広告では、青いボトル、氷、冷気、みずみずしい肌といった視覚表現を使い、肌に触れた瞬間の冷たさまで想像させる。

さらに、ポップアップイベントでは、実際に冷やした化粧水やジェルを試せる場所を作る。Number_iの起用やキャンペーンによって、ファンが商品やイベントに触れ、写真を撮り、SNSで発信したくなるきっかけも用意する。

こうして冷やし雪肌精は、「冷やすと気持ちいい化粧水」という情報から、「この夏、自分もやってみたい体験」へ変わりました。

化粧品を売るのではなく、夏の美容行動を売っている

化粧品に置いて、機能価値は必要です。しかし、機能を説明するだけでは、数多くある美白化粧水や夏向け化粧品の中に埋もれてしまいます。

冷やし雪肌精は、効果を伝えるだけで終わっていません。

暑い外から帰ってきて、冷蔵庫を開ける。冷えた青いボトルを取り出す。肌にたっぷりとなじませる。冷たさにほっとしながら、夏の肌を整える。

この一連の時間を、商品価値として見せています。

つまり、売っているのは化粧水だけではありません。

「暑い夏の終わりに、肌も気分も整う時間」を売っているのです。

だから、「透明感が欲しいから買う」だけではなく、「あの冷たいケアをやってみたいから買う」という新しい購入理由が生まれます。

ブランド資産を変えずに、使われる理由を更新した

さらに、冷やし雪肌精は、雪肌精がこれまで持ってきたブランド資産とも非常に相性がいい。

雪、青、透明感、みずみずしさ、さっぱりとした使用感。

もともと雪肌精が持っていた要素に、「冷やす」という行動を加えただけで、ブランドの世界観がより具体的になっています。

無理に新しいイメージを付け足したのではありません。

ブランドがすでに持っていたイメージを、夏の生活行動に変換した。だから違和感なく、長く続けられる企画になっています。

新商品を出したから新しく見えたのではなく、既存商品に新しい使う理由を与えたから、再び選ばれる商品になったのです。

目指しているのは、「夏=雪肌精」の第一想起

この施策の本当の強さは、売上や認知だけではありません。

「夏になったら雪肌精を使いたい」「今年も冷やし雪肌精をやりたい」という季節習慣を作れることです。

毎年、夏になるたびに新しい訴求を一から考えるのではなく、「夏は冷やし雪肌精」という大きな軸を持つ。

その軸があれば、今年はCMを強化する。次の年はイベントを行う。その次は限定品や店頭体験を増やすというように、同じ資産を積み上げながら企画を発展させられます。

これは、一度きりのキャンペーンではありません。

夏という季節そのものと、雪肌精を結びつける戦略です。

「暑くなったら、冷たいものが欲しくなる」
「夏になったら、雪肌精を冷やして使いたくなる」

ここまで生活者の中に定着すれば、雪肌精は単なる化粧水ではなく、夏を代表するブランドになっていきます。

一つの季節軸が、広告・SNS・店頭をすべてつなぐ

この戦略は、生活者だけでなく、社内にとっても大きなメリットがあります。

年間を通して、毎月違う企画を考え続ける必要がありません。

夏は冷やし雪肌精を売る。そう決めれば、広告、SNS、PR、店頭、営業、イベント、ECが同じ方向を向けます。

SNS担当は、冷たさや夏の使用場面を中心に発信する。店頭スタッフは、冷やして使う体験を提案する。広告担当は、暑さや日差しと結びつけたクリエイティブを作る。営業は、夏に向けて売り場や在庫を集中させる。

何を伝えるかが明確になるため、現場も動きやすい。

「今月は何を発信しよう」
「今年の夏は何を売り出そう」

と、毎回ゼロから考える必要がなくなります。

「冷やし雪肌精」という一つの軸から、広告、イベント、店頭施策、SNS企画を広げていけるからです。

夏に大きく売るという選択

極端に言えば、「一年中、平均的に売ろう」とするのではなく、「夏に一年分売る」くらいの集中した戦略も立てやすくなります。

もちろん、実際に一年分を夏だけで売るという意味ではありません。

売上を伸ばすべき時期を明確にし、その期間に人、予算、広告、在庫、イベントを集中させるということです。

売る時期が明確になれば、仕込みの時期、忙しくなる時期、落ち着く時期も見えます。

春から夏に向けて準備し、夏に大きく売り、秋以降は分析や次年度の準備に入る。繁忙期の後に休暇を取りやすくするなど、人員配置や福利厚生の設計にもつながります。

ブランドの季節軸が決まることは、広告が作りやすくなるだけではありません。

事業のリズムそのものが整うということです。

ブームは、毎年の積み重ねでつくられる

冷やし雪肌精から学べるのは、ブームは一度の派手な広告だけで作るものではない、ということです。

毎年繰り返し発信する。生活者が使う場面を具体的に見せる。実際に試せる場所を作る。憧れの人やSNSを通じて、「自分も参加したい」と思える空気を作る。

そうして、情報を体験へ、体験を季節習慣へ育てていく。

商品を毎年変えなくても、商品を使う意味と時間を育てれば、ブランドは新しく見せられます。

既存商品でも、ブランドの恒例行事はつくれる

冷やし雪肌精は、既存商品を売り直したのではありません。

「夏になったら、雪肌精を冷やして使う」という行動を、ブランドの恒例行事にしたのです。

いろいろな商品を次々に売り出すのではなく、一つの体験を育てる。

そして、その体験を広告、SNS、店頭、イベント、スタッフの動きまで一貫させる。

その結果、生活者には「夏になったら使いたい」という気持ちが生まれ、社内には「夏はこれを軸に動けばいい」という明確な方針が生まれます。

生活者が参加したくなる体験にし、毎年繰り返せる季節習慣にし、さらに事業全体を動かす軸にまで育てたこと。

そして、その恒例行事が定着したとき、雪肌精は「夏が来たことを知らせるブランド」になっていきます。

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