“このブランドといえば”をつくる
化粧品ブランドを構築するときに、「化粧水も、美容液も、クリームも、クレンジングも、全部しっかり伝えたい」と考えたくなります。
もちろん、どの商品にも開発背景があり、成分のこだわりがあり、伝えるべき魅力があります。
ただ、消費者の立場で見ると、最初からブランド全体を深く理解して購入する人は多くありません。
昔はブランド重視での購買がありましたが、最近は「商品」ベースでの購買が盛んです。
「このクレンジング、よく見る」という、ひとつの強い入口からブランドに入っていくことが多いのではないでしょうか。
その点で、ファンケルはとても参考になるブランドだと感じました。
ファンケル=無添加化粧品のイメージ
ファンケルは、化粧品による肌トラブルに疑問を持ったことから、無添加化粧品の開発が始まったと言われています。防腐剤などを使わないために、使い切りサイズの小分け容器にするという発想も、単なる商品仕様ではなく「肌に不安を感じる人のために、どうすれば安心して使えるか」という考えから生まれたものです。
ファンケルの出発点には、世の中にある「不」を取り除くという姿勢があります。
肌が弱い人。化粧品で荒れた経験がある人。良いものを使いたいけれど、価格が高すぎるものは続けにくい人。毎日心地よく、無理なく、自分の肌を守っていきたい人。
そうした人たちを置いていかない、やさしさと誠実さがブランド全体に流れています。
公式サイトを見ても、ファンケルの世界観はとても穏やかです。
強く煽るというより、そよ風が通るような心地よさがあります。清潔感があり、やさしく、透明感があり、押しつけがましさがありません。
日々の中にある小さな不安や不便を、そっと軽くしてくれるような印象があります。
入口商品「マイクレ」の存在
消費者が実際に最初に手に取りやすい入口としては、やはりマイルドクレンジングオイル、いわゆる「マイクレ」の存在が大きいと感じました。
楽天や@cosmeの口コミを見ると、マイクレには非常にわかりやすい評価があります。
「するっと落ちる」
「メイク落ちはいいのにつっぱらない」
「他のクレンジングを使っても、結局これに戻る」
「この価格でこのクオリティはすごい」
「何年もリピートしている」
この口コミの強さは、ブランドにとって大きな資産です。
化粧品は、使ってみないと本当の良さがわかりにくい商品です。特にクレンジングは、成分説明だけでは差別化しにくいジャンルでもあります。
しかし、ファンケルのマイクレは、消費者が体感しやすい価値を持っています。
無添加や肌へのやさしさを掲げるブランドは、場合によっては「落ちにくそう」「物足りなそう」と思われることもあります。
一方で、洗浄力を強く打ち出すブランドは、「肌に負担がありそう」と思われることがあります。
ファンケルのマイクレは、その間にある不安をうまく解消しています。
ここから学べることは、入口商品と展開商品の考え方だと思います。
消費者の記憶に残るブランドになるためには、まずひとつ、強い認知の柱が必要です。
「このブランドといえば、これ」
「一度は使ってみたい商品」
「口コミでよく見る商品」
「他を使っても戻ってくる商品」
そういう入口商品があると、ブランド全体の理解が一気に進みやすくなります。
ファンケルの場合、マイクレがその役割を担っています。
マイクレでファンケルを知る。
使ってみて、品質の良さを感じる。
ファンケルへの信頼が生まれる。
洗顔や化粧水も使ってみたくなる。
サプリメントや他の商品にも関心が広がる。
この流れがとても自然です。
実際、口コミの中にも「クレンジングと洗顔がよかったので、化粧水も使ってみたくなった」という声がありました。
これはブランド設計として、とても重要です。
広告やLPで「この化粧水もいいです」「この美容液もおすすめです」「このクリームもあります」とすべてを並べるよりも、まずひとつの代表商品で信頼を取る。
その代表商品を通じて、ブランドの思想や品質を体感してもらう。
その後に、ライン商品や関連商品へ広げていく。
この順番の方が、消費者にとっても受け入れやすいのだと思います。
化粧品市場での新しい概念の作り方
また、ファンケルは、新しい概念の作り方も上手いブランドだと感じました。
たとえば「角層は肌の履歴書」という表現や、「皮脂の悪玉化」という切り口。
どちらも、ただ成分や機能を説明するだけではなく、消費者が「なにそれ、ちょっと気になる」と思える言葉になっています。
化粧品は、すでに多くの商品があり、成分や機能だけでは差別化が難しくなっています。
だからこそ、ブランド側がどんな視点で肌を見ているのか、どんな不安を解消しようとしているのかを、わかりやすい言葉に変えることが重要です。
ファンケルは、「無添加」という大きな思想を持ちながら、商品ごとに新しい気づきや興味の入口を作っています。
マイクレなら、するっと落ちるのに肌を守る。
toiroなら、肌ブレや皮脂の悪玉化に着目する。
サプリメントなら、健康食品をもっと身近で続けやすいものにする。
どれも共通しているのは、消費者の中にある小さな不安や不便を見つけ、それを商品や言葉で解消している点です。
ここに、ファンケルらしさがあります。
“やさしさの設計”が、ブランド全体に一貫しているように感じました。

