今回インタビューしたのは、40代のナチュラル・オーガニック系の化粧品がお好きな女性。
化粧品を購入する際、コスメキッチンや楽天市場の「むぎごころ」といった、複数のブランドを扱うショップを利用していました。
その理由は、「最初から、ある程度選んでくれているから」です。
化粧品を一から探すのは、あまりにも大変
現在は、国内外の化粧品ブランドが次々と誕生し、ECモールやSNSには膨大な数の商品が並んでいます。
一見すると、選択肢が増えたことは生活者にとって良いことのように思えます。
しかし、選択肢が多すぎることで、かえって選べなくなる人もいます。
特にオーガニックやナチュラル系の化粧品は、「自然派」「無添加」「オーガニック」といった似た言葉を掲げるブランドが多く、違いが分かりにくいカテゴリーです。
今回のインタビュー対象者も、商品の全成分を確認し、分からない成分があれば自分で検索するなど、かなり慎重に化粧品を選んでいました。
それでも、一から商品を探すのは難しいと話しています。
そこで利用しているのが、ナチュラル志向の商品を一定の基準で集めているセレクトショップです。
インタビューでは、次のような言葉がありました。
「一から探そうと思うと難しい。ある程度キュレーションしてくれているショップを見ると、時短になる」
ショップが一度商品を選び、その中から生活者が自分に合うものを選ぶ。
つまり、生活者は商品の選定を完全にショップへ任せるのではなく、ショップの審査を一次選考として利用しているのです。
生活者が買っているのは、商品だけではない
この購買行動で重要なのは、生活者が商品だけでなく、ショップの「選ぶ力」も評価していることです。
たとえば、あるショップが次のような商品を継続して扱っていたとします。
- 成分や原料について詳しい情報が掲載されている
- ブランドの製造姿勢や考え方が分かる
- ナチュラル志向というショップの基準から大きく外れない
- 過度な広告表現だけで販売されていない
- 価格と品質のバランスが取れている
このような商品選定が積み重なると、生活者の中に「この店が扱っているものなら、大きく外れることはない」という認識が生まれます。
すると、最初は一つの商品を買うために訪れていたショップが、次第に「化粧品を探すときに最初に見る場所」へ変わっていきます。
個別の商品やブランドを検索する前に、まずそのショップを訪れる。
これは、ショップ自体に顧客がついている状態です。
言い換えれば、生活者にとっての「行きつけの化粧品店」「化粧品選びの相談相手」のような存在です。
ブランドのファンではなく、店の“お得意さま”になる
この構造は、実店舗のセレクトショップだけに限りません。
通信販売を中心に展開してきた企業にも近い部分があります。
一つの主力化粧品だけではなく、スキンケア、メイク、健康食品、インナーケア、日用品など、生活に関わる複数の商品を扱っているためです。
もちろん、これらは一般的なセレクトショップとは異なり、自社商品を中心に販売しています。
しかし、生活者から見ると、「必要なものを、この会社の中から選ぶ」という購買行動が生まれます。
化粧水はA社、洗顔はB社、サプリメントはC社と、その都度探すのではなく、「まずこの会社のカタログを見る」「この通販サイトの中から探す」という選び方です。
特に40代以降の生活者は、仕事、家事、子育て、親の介護などによって、化粧品を比較するための時間を十分に取れないことがあります。
今回のインタビュー対象者も、家族の介護によって時間や金銭面に制約がある中で、スキンケアをシンプル化していました。
商品数を減らしながらも、安心して使えるものを選びたい。
そのような生活者にとって、信頼できるショップや通販会社は、「自分の代わりに、ある程度選択肢を絞ってくれる存在」なのです。
SNSの口コミより、ショップの選定を信頼する人もいる
化粧品の情報収集というと、InstagramやTikTok、YouTube、インフルエンサーの投稿などが注目されます。
しかし、すべての生活者がSNSの情報を基準に商品を選ぶわけではありません。
今回のインタビューでも、「インフルエンサーをあまり信じていない」という発言がありました。
個人のおすすめよりも、一定の方針で商品を取り扱っているショップのほうが信頼できる。
そのうえで、成分や価格、使い方を自分でも確認して、購入するかどうかを決める。
このように、現代の化粧品購買には、「SNSで話題の商品を買う」だけではなく、「信頼しているショップが選んだ商品の中から、自分に合うものを買う」という流れも存在します。
これから必要なのは、商品ではなく「選択肢」を編集する力
生活者が求めているのは、商品数の多さだけではないということです。
むしろ、商品が多すぎる時代だからこそ、
「なぜ、この商品を扱っているのか」「どのような人に向いているのか」「ほかの商品と何が違うのか」「どのような基準で選定したのか」を明確に示すことが重要になります。
ただ商品を並べるのではなく、ショップとしての選定基準や思想を伝える。
さらに、「敏感肌の人に選んだ商品」「40代からのシンプルケア」「成分を確認して選びたい人向け」など、生活者が自分に合う商品を見つけやすい形に編集する。
その積み重ねによって、ショップは「販売する場所」から「選ぶ手間を減らしてくれる場所」へ変わっていきます。
そして、選定への信頼が築かれれば、新しいブランドや知らない商品であっても、「このショップが選んでいるなら見てみよう」と思ってもらえるようになります。
「何を売るか」と同時に、「誰が選んだか」が問われる
生活者がすべての情報を自分で調べ、判断することには限界があります。
だからこそ今後は、個別ブランドの認知だけでなく、
「この店から選べば、大きく間違えない」「この会社の商品なら、自分の考え方に合っている」という、販売者やショップ単位の信頼が、購買を左右するようになるのではないでしょうか。
化粧品があふれている時代だからこそ、信頼できる店の“お得意さま”になるという購買行動が、これからさらに重要になっていくと考えられます。

