SNSで美容情報を集めても、実際に買うのは「知っている人」のひと言

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生活者インタビューから見えた、化粧品購入における口コミの本当の役割

化粧品をどこで知りましたか。

生活者インタビューでこの質問をすると、よく返ってくるのが「Instagram」「YouTube」「TikTok」「ネットで見た」という回答。

ところが、「では、なぜ実際に買ったのですか」と購入まで掘り下げていくと、少し違う答えが出てくる。

「友達がよいと言っていたから」
「美容に詳しい知人に勧められたから」

SNSで情報を見ていても、最後に購入を決めるのは、身近な人からの口コミであることが少なくない。

これは、SNSが購買につながっていないという話ではない。

SNSと人からの口コミでは、購買行動の中で担っている役割が違うのではないだろうか。

SNSは、商品を知るための場所。
人の口コミは、その商品を自分が買ってもよいと判断するための場所。

複数の生活者への美容インタビューを重ねる中で、この構造が見えるようになってきた。

中国で流行する「377美容液」を買ったきっかけも、友人だった

今回、中国と日本を行き来して暮らす女性に、美容情報の集め方や化粧品の購入について話を聞いた。

彼女は美容専門学校を卒業し、エステで働いた後、美容専門商社に転職した経験を持つ。

一般の生活者よりも、美容や化粧品に関する知識を持つ女性である。

普段、新しい化粧品と出会う場所について尋ねると、InstagramなどのSNSを見ることが多いと答えた。

特定の美容インフルエンサーを追うのではなく、検索画面やおすすめ欄に表示される投稿を幅広く見るという。

しかし、直近で購入した美容液について尋ねると、購入のきっかけはSNS上の広告でも、ブランドの公式発信でもなかった。

中国人の友人から、「最近これが流行っている」「小紅書で美容に詳しい女性たちも使っている」と教えてもらったことだった。

その商品には、「377」と呼ばれるフェニルエチルレゾルシノールが配合されていた。

中国では美白成分として認知されており、店頭でも複数のブランドが「377」を前面に出した商品を販売しているという。

実際の購入につながる入口を作ったのは、信頼できる友人の言葉だったのである。

SNSで見て買うことと、人に勧められて買うことは両立する

「SNSで美容情報を見ている」という回答と、「人から勧められて買った」という回答は、矛盾しているようにも見える。

しかし、実際の購買行動は、一つの情報源だけで完結しているとは限らない。

たとえば、次のような流れが考えられる。

SNSで何度か商品を見かける。
名前やパッケージに見覚えができる。
気になるものの、まだ購入はしない。
その後、友人から「これ、よかったよ」と聞く。
もう一度SNSや口コミサイトで調べる。
購入する。

この場合、本人は「SNSで知った」とも言えるし、「友人に勧められて買った」とも言える。

SNSは認知を作り、人の口コミは決断を後押ししている。

2025年の世界の美容市場に関するマッキンゼーの調査でも、消費者が美容の着想を得る場所として、実店舗に続いて友人や家族が上位に入り、SNSやインフルエンサーの相対的な影響力には低下も見られると報告されている。一方で、SNSは依然として商品発見の重要な接点である。

SNSか口コミか、どちらが重要なのか。

そのように二者択一で考えるのではなく、

SNSが商品を候補に入れ、人の口コミが候補から一つを選ばせると考えた方が、実際の購買行動に近い。

なぜSNSを見ているのに、最後は人の口コミを信じるのか

化粧品は、使ってみるまで結果が分からない

化粧品は、購入前に品質を完全には判断できない商品である。

服であれば、形や色、素材を見て、ある程度は購入後を想像できる。

食品であれば、味の好みはあるものの、価格が低ければ一度試してみることもできる。

しかし、化粧品は単に「好き」「嫌い」だけで判断できない。

  • 自分の肌に合うのか
  • 刺激が出ないか
  • 使用感を心地よいと感じるか
  • 今使っている化粧品と組み合わせられるか
  • 継続した先で変化を感じられるか
  • 価格に見合うのか

購入前には分からないことが多い。

しかも、肌に合わなければ、赤みやかゆみ、乾燥などが起こる可能性もある。

化粧品の購入には、「お金を無駄にしたくない」という不安だけでなく、「肌に失敗したくない」という不安がある。

だからこそ、実際に使った人の経験が必要になる。

美容に詳しい人ほど、むしろ人の口コミを重視する

美容の知識が少ない人ほど口コミに頼り、美容に詳しい人は自分で成分を見て判断する。

一般的には、そのように考えられやすい。

しかし、生活者インタビューを重ねていると、必ずしもそうではないと感じる。

美容業界で働いていた人や、日常的に多くの化粧品を試している人ほど、

「美容関係の友人がよいと言っていた」「元同僚に勧められた」「美容に詳しい人だから信用した」という話が出てくる。

今回のインタビュー女性も、美容医療の情報はInstagramだけでなく、以前エステサロンで一緒に働いていた友人から得ることが多いと話していた。

その理由について、「美容の感度が高い子たちが言っているのだから、間違いないかなと思う」と表現している。

美容に詳しい人は、知識があるから口コミを必要としないのではない。

むしろ知識があるからこそ、実際に試した人から具体的な情報を得ようとする。

しかも、誰の口コミでもよいわけではない。

自分と同程度、あるいは自分以上に美容を理解していると感じる人の口コミを選ぶ。

美容に詳しい人が信頼しているのは、口コミそのものではなく、口コミをする人の判断能力なのだと思う。

SNSのフォロワー数より、「この人なら分かっている」が重要

企業はSNS施策を考える時、フォロワー数や再生回数、いいね数に目を向けやすい。

もちろん、多くの人に商品を知ってもらうためには、リーチも必要である。

しかし、実際の購入を動かす力は、必ずしもフォロワー数と比例しない。

生活者が見ているのは、

  • 本当に普段から美容が好きな人なのか
  • これまでの発信と一貫しているか
  • 自分と肌質や悩みが似ているか
  • よい点だけでなく、合わない人も説明しているか
  • 商品を売る時だけ美容について話していないか
  • 普段の選び方に納得できるか

といった部分である。

美容に詳しい友人が信頼されるのも、資格や職歴だけが理由ではない。

過去にどんな商品を使い、どんな判断をしてきたかを知っているからである。

「この人は何でも褒める人ではない」
「自分に合わないものは、合わないと言う」
「美容にお金を使って、実際に試している」
「私の肌についてもある程度知っている」

こうした蓄積があるから、一言の重みが増す。

SNS上でも同様に、影響力を生むのは発信の規模だけではなく、判断の履歴が見えることなのではないだろうか。

SNSで探し、友人に確認し、またSNSに戻る

購入行動は、SNSから口コミへ一方向に流れるわけではない。

友人に勧められた後、もう一度SNSや口コミサイトで検索する人も多い。

たとえば、

  1. 友人から商品を教えてもらう
  2. InstagramやTikTokで商品名を検索する
  3. 使用感や悪い口コミを確認する
  4. ECサイトで価格を比較する
  5. 購入する

という動きである。

ここでは、人の口コミが購入を決め、SNSは確認材料として使われている。

反対に、

  1. SNSで商品を知る
  2. 保存する
  3. 美容に詳しい友人に聞く
  4. 勧められて購入する

という場合もある。

つまり、SNSと人の口コミは競合するものではない。

生活者は、両方を行き来しながら不安を減らしている。

美容商品の購入導線を考える時には、

どの広告から、そのまま購入したのか

だけを見ると、生活者の本当の判断過程を見落とす。

広告を見てから購入するまでの間に、誰かとの会話が入っているかもしれない。

家族に話した。
友人に聞いた。
美容師やエステティシャンに確認した。
以前その商品を使っていた人を思い出した。

計測できない会話が、購入を決めている可能性がある。

化粧品ブランドは、口コミを「増やす」のではなく、話せる材料を作る

口コミ施策というと、レビュー件数を増やすことや、SNS投稿を依頼することが中心になりやすい。

しかし、本当に人から人へ伝わる口コミは、企業が用意した紹介文をそのまま読んだものではない。

「あれ、よかったよ」
「私は朝に使うのが好き」
「少し刺激はあるけれど、毛穴にはよかった」
「乾燥肌なら、クリームと一緒に使った方がいい」
「高いけれど、かなり長く使えた」
「この成分が入っているから選んだ」

このような、生活者自身の短い言葉で伝わる。

企業が作るべきなのは、完成された口コミ文ではなく、生活者が人に話したくなる具体的な材料である。

何が違うのかを、一言で説明できるようにする

商品について友人から聞かれた時、消費者が説明できなければ口コミは広がりにくい。

技術や成分が複雑であっても、

「日焼けした後に使っている美容液」
「肌が揺らいだ時でも使いやすい化粧水」
「朝のメイク前に使っても重くならないクリーム」

のように、一言で役割が伝わる必要がある。

よい人だけでなく、「合わない人」も伝える

口コミの信頼性を高めるのは、万能感ではない。

「かなりしっとりするので、脂性肌には重いかもしれない」
「即効性より、毎日使い続けたい人向け」
「香りがあるので、無香料が好きな人には向かない」

といった条件がある方が、実際の会話で共有しやすい。

すべての人に合うと言うより、自分の友人に合うかを判断できる情報を渡す。

使用後の感想を、言葉にしやすくする

消費者は効果を感じていても、うまく説明できるとは限らない。

「肌がきれいになった」以外に、

  • 朝、肌に触れた時の感触
  • メイクのり
  • 夕方の乾燥
  • 毛穴の見え方
  • 使用前に感じていた不満
  • どのタイミングで使いたくなるか

など、変化を観察する視点を提供する。

感想を言語化できれば、その言葉が口コミになる。

SNS時代だからこそ、「誰から聞いたか」が重くなる

美容情報は、以前よりはるかに手に入りやすくなった。

成分について検索すれば、詳しい解説が出てくる。
SNSを開けば、新商品が次々と紹介される。
口コミサイトには、数百件、数千件のレビューが並んでいる。

情報が少なかった時代には、情報を持っていること自体に価値があった。

しかし、情報が多すぎる現在は、状況が逆転している。

多くの情報の中から、

何を信じるのか。
自分にはどれが合うのか。
今買う必要があるのか。
誰の意見を参考にするのか。

を判断しなければならない。

だから生活者は、情報そのものだけでなく、情報を選んでくれる人を求める。

SNSによって選択肢が増えすぎたからこそ、信頼できる人の口コミが必要になっている。

商品を使った人が、大切な誰かに自然と話したくなる理由を作ること。

そして、誰かから相談された時に、自分の言葉で勧められる商品になること。

広告では届かない最後の一歩は、人と人との会話の中にある。

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