オルビスから見えた、中価格帯スキンケアの役割設計
オルビスは、「ここちを美しく。」というブランドメッセージや、「SMART AGING®」というフィロソフィーを掲げています。
単に年齢に抗うのではなく、その人らしく、ここちよく年齢を重ねていくこと。
さらに、その“ここちよさ”を感覚だけで終わらせず、科学的な研究や商品設計にも落とし込んでいるブランド。
また、2018年以降のリブランディングによって、オルビスは「オイルカット」「ニキビ肌向け」「通販化粧品」といった従来のイメージから、オルビスユーやオルビス ユードットを中心とした、エイジングケアブランドとしての印象を強めてきたように見えます。
価格帯としては、デパコスほど高くはない。けれど、ドラッグストアの低価格帯よりは“ちゃんと選んでいる感”がある。
3000円〜5000円前後で、毎日使い続けやすく、品質への信頼もある。
中価格帯の化粧品は、なぜ「可もなく不可もなく」になりやすいのか
オルビスの口コミを見ていると、評価されている点はとてもわかりやすいです。
価格が続けやすい。
肌に合いやすい。
テクスチャーがここちよい。
日常的に使いやすい。
一方で、この価格帯の基礎化粧品には、どうしても「可もなく不可もなく」という感想も生まれやすいと感じました。
悪くはない。でも、ものすごく感動するほどでもない。
他にも似た価格帯の商品はたくさんある。
SNSで話題の商品があれば、そちらも試してみたくなる。
これはオルビスに限った話ではなく、3000円〜5000円前後の基礎化粧品全体に起こりやすいことだと思います。
デパコスほどの憧れや所有欲で選ばれるわけではなく、プチプラほど価格の安さだけで選ばれるわけでもない。
だからこそ、お客様は比較しやすく、乗り換えやすい。
スマホ会社を乗り換えるように、基礎化粧品も「今はこれ」「次はあれ」と渡り歩く。特に美容感度が高い人ほど、SNSや口コミで新しい商品を知り、次々と試していきます。
では、こうした中価格帯の化粧品ブランドは、どうすれば選ばれ続けるのでしょうか。
そのヒントになるのが、カテゴリーエントリーポイントと第一想起という考え方です。
カテゴリーエントリーポイントとは何か
カテゴリーエントリーポイントとは、お客様がある商品カテゴリーを思い出す“きっかけ”や“場面”のことです。
たとえば、スキンケアで考えると、
肌が乾燥してきた時。
季節の変わり目で肌がゆらいだ時。
鏡を見て、年齢サインが気になった時。
毛穴汚れやメイク残りが気になった時。
デパコスは高いけれど、安すぎるものも不安だと思った時。
美容情報を見すぎて、何を選べばいいかわからなくなった時。
こうした「何かを買いたい」と思う前の、生活の中の小さなきっかけがカテゴリーエントリーポイントです。
お客様は、いきなり商品名を検索するわけではありません。
まず、肌や気持ちの中に何かの変化があります。
「あれ、最近乾燥する」
「毛穴が気になる」
「そろそろ年齢ケアを始めた方がいいのかな」
「今の化粧品、悪くないけど何か物足りない」
「高いものは続かないけど、ちゃんとしたものを使いたい」
その瞬間に、頭の中で何かのカテゴリーが立ち上がります。
保湿化粧水。
エイジングケア。
クレンジング。
敏感肌向け。
中価格帯のちゃんとしたスキンケア。
そして、その場面で最初に思い出される商品が、第一想起の商品です。
中価格帯の基礎化粧品ブランドが目指すべきなのは、「どんな時に、最初に思い出されるブランドになるのか」。
オルビスは、どんな場面で思い出されるブランドなのか
オルビスは、単なる“やさしい化粧品”ではなく、いくつかの場面で思い出されやすいブランドになっているということです。
たとえば、
デパコスほど高いものは続かないけれど、ちゃんとしたエイジングケアを始めたい時。
肌に負担が少なく、ここちよく使えるものを選びたい時。
ポーラ・オルビスグループの研究力への信頼感もありつつ、手に取りやすい価格で使いたい時。
初期エイジングケアを、無理なく日常に取り入れたい時。
派手な美容ではなく、自分らしく年齢を重ねるためのケアを選びたい時。
こうした場面で、オルビスは思い出されやすいブランドなのではないかと感じます。
特に「オルビスユー」や「オルビス ユードット」は、エイジングケアに興味を持ち始めた人にとって、いきなり高価格帯に行く前の“最初の本格ケア”として機能しているように見えます。
これは中価格帯ブランドとして、とても大きな役割です。
化粧品は「誰向け」だけでなく「どんな時の商品か」を決める
化粧品のブランディングでは、よく「誰向けか」が語られます。
30代女性向け。
敏感肌向け。
乾燥肌向け。
エイジングケア世代向け。
もちろん、これも大切です。
でも、今の消費者はひとつの商品をずっと使い続けるとは限りません。
肌状態や気分、季節、予算、SNSで見た情報によって、化粧品を使い分けています。
だからこそ、これからの化粧品は、「誰向けか」だけではなく、「どんな時に選ばれる商品なのか」まで明確にする必要があると思います。
たとえば、
肌がゆらいだ時に戻る化粧品。
攻め美容の前に、肌を整える商品化粧品。
年齢ケアを始めたい時の最初の一歩になる化粧品。
美容情報に疲れた時に、迷わず選べる化粧品。
デパコス未満、プチプラ以上で、納得して続けられる化粧品。
こうした役割が明確になると、お客様の頭の中で商品が結びつきやすくなります。
そして実際にその場面が来た時に、「あの商品、前に見たことある」「あの商品、こういう時に良さそうだった」と思い出してもらえる。
これが、カテゴリーエントリーポイントと第一想起を化粧品に活かすということだと思います。
SNS時代の化粧品は、その場で買われるだけではない
SNSで化粧品を知った時、お客様はすぐに買うとは限りません。
その場では保存するだけかもしれない。
なんとなく名前だけ覚えるだけかもしれない。
口コミを見て終わるだけかもしれない。
でも、あとから肌悩みが発生した時に、その記憶が引き出されます。
ある日、鏡を見てシミが気になる。その時に「そういえば、あの商品が美白ケアで話題だった」と思い出す。
毛穴汚れが気になる。その時に「そういえば、あのクレンジングが毛穴奥の汚れまでと言っていた」と思い出す。
つまり、SNSや広告は、その場で買わせるだけではなく、未来の購買場面に向けて“記憶のフック”を作っているとも言えます。
だからこそ、ブランド側は「何の商品か」だけでなく、「どんな時に思い出してほしいのか」を言葉にしておく必要があります。
まとめ
化粧品市場では、商品はどんどん増えています。
大切なのは「どんな時に思い出されるブランドになるのか」を設計すること。
乗り換えが起こりやすい中価格帯の基礎化粧品にとって、とても重要な視点なのではないでしょうか。
カテゴリーエントリーポイントを考えることは、お客様の生活の中にある、肌の変化、不安、迷い、期待を見つけること。
そして、その瞬間に「それならこのブランド」と思い出してもらえるように、言葉・商品・販路・体験をつなげていくこと。
それが必要なのではないでしょうか。

