シャネル|化粧品を買うこと自体が「体験」となる

1909年にパリで誕生したシャネルは、創業者ガブリエル・シャネルの「古い価値観にとらわれない女性像」を起点に、ファッションも美容も含めて時代の美しさを更新してきたブランドです。

シャネルの背景には、ガブリエル・シャネルの考え方があります。
・固定概念を壊すこと
・自立すること
・自由であること
・自分の人生やスタイルを、自分で選び、つくっていくこと

この思想が、ブランド全体の土台になっています。

ただ、消費者は最初からその思想に共感して入ってくるとは限りません。

実際にはもっと生活者に近いところから、シャネルとの接点が始まっているようです。


たとえば、「シャネルを一度は使ってみたかった」「プレゼントでもらった」「親が使っていた」「デパコスに憧れて、その延長でシャネルにたどり着いた」といった出会い方です。

つまり、ブランドが掲げている思想はとても大きい。でも、消費者との最初の接点は意外と身近です。

ブランドとしては、自由や自立、創造性という大きなテーマを持っているが、消費者の入口は、自分へのご褒美で買ったリップ1本や、友人から誕生日にもらったコスメなど。

まずは「使ってみたい」「持ってみたい」「シャネルってどんな感じなんだろう」という好奇心から、少しずつブランドの世界観に触れさせていっているようです。


実際、口コミを見ていても、評価されているのは単純な機能だけではありませんでした。

もちろん「ハリが出た」「ツヤが出た」「キメが整った」といった声もあります。
でも、それと同じくらい印象的だったのが、使うことで気分が上がるという感覚です。

・シャネルの化粧品を使っているだけで高揚感がある
・香りに癒される
・自分を丁寧に扱っている気持ちになれる
・なんだか満たされる

この感覚は、単なる「高級だから」では片づけられないと思っています。

化粧品そのものを買っているだけではなく、その化粧品を使う自分に対して感じられる気持ちを買っている部分がある。
シャネルは、その情緒価値のつくり方がとても強いブランドです。

しかもその情緒価値は、ふわっとした曖昧なものではなく、ちゃんとブランドの思想とつながっています。


シャネルのSNSを見ると、シャネルは商品単体を押し出すというより、人物やスタイル、生き方のようなものを映している印象がありました。「自分の意志で選んでいる人」の空気があります。

今は「無理しない」「自分にやさしく」という空気も強いですが、その中でも、人はどこかで「自分の人生を自分でつくりたい」「意思を持って生きたい」という憧れを持っているのかもしれません。
シャネルは、その感情を刺激してくるブランドなのだと思います。

一方で、売り方もとても現実的です。

価格帯は広く、1万円以下で入れる商品もあれば、10万円近いスキンケアもあります。
つまり、完全に遠い世界のブランドではなく、誰でも入口には立てる設計になっています。

さらに高価格帯になればなるほど、ECで買うより、カウンターでの接客体験も含めて価値になっているように見えました。
商品そのものだけでなく、シャネルの世界の中で自分が扱われることまでが購買体験になっている。

ここにも、ブランドとしての一貫性があります。
ただモノを売るのではなく、そのブランドに触れる時間まで含めて体験設計されているのだと思います。


今回シャネルを見ていて、改めて学びになったのは、強いブランドほど、「どんな価値観を持っているか」が明確だということです。

そして、その価値観をSNSの見せ方、商品ライン、接客、口コミ、入口商品の設計。そういったもの全部を通して、少しずつ伝えています。

シャネルが消費者が最初に受け取るのは、「憧れ」や「間違いない安心感」かもしれません。
でも、その奥には、自由、自立、創造性という大きなメッセージが流れている。
その二層構造こそが、シャネルの強さなのだと思います。

ブランドづくりを考えるとき、つい「何を言うか」「どんな訴求が刺さるか」に意識が向きがちです。
でもその前に、このブランドは、どんな価値観を持ち、どんな気持ちを届けたいのかを持っているかどうかが大事なのかもしれません。

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